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千葉の役所がAIで激変!6割の自治体が導入する「未来の働き方」とは?議事録作成から市民サービスまで、その裏側を徹底解説

 

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「千葉県内の自治体の6割が、生成AIを活用している」―。そんな驚きのニュースが飛び込んできました 。AIと聞くと、少し難しくて遠い未来の話のように感じるかもしれません。でも実は、私たちの暮らしを支える市役所や町役場で、静かな、しかし確実な「働き方革命」が始まっているのです。

この「生成AI」とは、一体何なのでしょうか?一言でいえば、「文章を作ったり、アイデアを出したり、情報を要約したりするのが得意な、超優秀なアシスタント」のようなものです。メールの下書きから、イベントの企画、難しい会議のまとめまで、ほんの数秒でこなしてくれます。

千葉県の取り組みが注目されているのは、ただ新しい技術を導入しているからではありません。市民のデータを守るための厳格なルールを作り、あくまで「職員を助け、より良いサービスにつなげる」という目的を徹底している点にあります 。これは、SF映画のような話ではなく、今まさに私たちの足元で起きている、行政サービスの新しいかたちなのです。

この記事では、千葉の自治体で進むAI活用の裏側に迫ります。なぜAI導入が加速しているのか、職員の仕事は具体的にどう変わったのか、そして最前線を走る市町村のユニークな取り組みから、私たちの情報を守るための大切なルールまで、分かりやすく徹底解説していきます。

なぜAI導入ラッシュ? 目的は「人のための時間」を取り戻すこと

自治体の仕事は、私たちが思う以上に膨大です。議事録の作成、報告書のとりまとめ、市民へのお知らせ作りなど、正確さが求められる事務作業に多くの時間が費やされています。これらは非常に重要な仕事ですが、職員がもっと市民一人ひとりの相談に乗ったり、地域の課題解決策をじっくり考えたりする時間を奪ってしまう側面もありました。

そこで登場したのが、生成AIです。最大の目的は、業務の圧倒的な効率化。その効果はすでにはっきりと表れています。

例えば千葉市では、生成AIの導入後、文書作成にかかる時間が平均で40%も短縮されました。一部の定型的な作業では、50%以上の効率化を達成したケースもあるといいます 。これは、これまで2時間かかっていた作業が、約1時間で終わる計算です。全国知事会が主導し、千葉県もサブリーダーとして参加するワーキングチームの調査でも、AIの主な使い道は「アイデア出し」「文書作成」「要約」といった、まさに時間のかかる作業が上位を占めています 。

しかし、この変革の本質は、単に時間を節約することだけではありません。本当に重要なのは、AIによって生み出された「新しい時間」を、何に使うか、という点です。

資料によれば、効率化によって職員は「より創造的で付加価値の高い業務に時間を割ける」ようになり、「市民サービスの質向上につながっている」と報告されています 。これは、AI導入が自動的に生み出す結果ではありません。自治体が「AIは職員を減らすためのコスト削減ツールではなく、今いる職員の能力を最大限に引き出すための生産性向上ツールだ」と明確に位置づけているからです。

つまり、私たち納税者にとっての本当の利益は、「仕事が速い役所」が生まれること以上に、「より親身で、思慮深い対応をしてくれる役所」が実現することにあります。AIに事務作業を任せることで、職員という「人」が、私たち「人」のためにより多くの時間を使えるようになる。これこそが、行政AIが目指す最大のゴールなのです。

退屈な作業から高速処理へ AIアシスタントがいる職員の一日

では、具体的にAIはどのように使われているのでしょうか。「なぜ」の次は「どうやって」を見ていきましょう。AIを導入した役所の日常は、私たちの想像以上に変化しています。

長時間かかった議事録作成の終わり

これまでは、何時間にも及ぶ会議の内容を文字に起こし、要点をまとめて議事録を作成する作業に、数日かかることも珍しくありませんでした。

しかしAIの導入後、その風景は一変します。音声データやテキスト化された文章をAIに読み込ませるだけで、要点を的確に捉えた議事録の草案が、わずかな時間で完成します。ある事例では、数時間かかっていた作業が約1時間に短縮され、会議の翌日には参加者に議事録を配布できるようになったといいます 。これにより、組織全体の意思決定のスピードも格段に向上しました。

より速く、分かりやすい公文書づくり

議会の答弁書や市民へのお知らせといった公文書は、正確性はもちろん、一貫性も求められ、厳しい締め切りの中で作成されます。

ここでAIは、頼れる「下書きパートナー」として活躍します。議会答弁や政策説明資料、市民向けの文書などの初期案をAIが作成し、職員がそれを基に修正・加筆していくのです 。この方法は、ゼロから文章を考える負担を大幅に軽減します。さらに、近隣の取手市では「AI議会答弁書作成支援システム」という専門的なツールも導入されており、この分野の進化が今後も期待されます 。

日常業務を支える「見えないアシスタント」

議事録や答弁書といった華々しい活用例以外にも、AIは日々の地道な業務を支えています。

  • Excelの魔術師: 複雑な集計をしたい時、「こういう計算をするためのExcel関数を教えて」とAIに尋ねるだけで、最適な数式やVBAコードを生成してくれます。これまで試行錯誤にかかっていた時間が大幅に削減されます 。
  • アイデアの泉: イベントの企画や広報用のキャッチコピー、新しい政策のアイデア出しなどでAIは壁打ち相手になります。多様な視点からアイデアを提供してくれるため、企画の幅が広がります 。
  • 庁内のお問い合わせ対応: 財務や服務規定など、職員からの専門的な問い合わせにAIが一次回答を行うといった活用も始まっています 。

現場の開拓者たち 千葉で進む多様なAI活用モデル

AI導入と一言で言っても、その進め方は自治体によって様々です。千葉県内では、それぞれの地域の実情に合わせて、実に多様な戦略が取られています。これは、どこかの成功例をただ真似するのではなく、自分たちの課題に最も合った方法を模索している健全な証拠と言えるでしょう。

各市の取り組みは、AI導入の成熟度や戦略的な優先順位の違いを浮き彫りにします。例えば、政令指定都市である千葉市は大規模な実証実験で具体的な成果を数値で示し、船橋市は専門家を招いてまず人材育成から着手しました。一方で成田市はセキュリティを最優先し、松戸市は迅速な全庁展開でスピードを重視しています。

この多様なアプローチは、これからAI導入を考える他の自治体にとって、貴重な「モデルのポートフォリオ」となります。以下の表は、千葉県内の先進的な自治体がどのようなモデルでAI活用を進めているかをまとめたものです。

自治体 (Municipality)

特徴 (Key Feature / Model)

具体的な活用事例 (Specific Use Cases & Approach)

関連資料 (Source Snippets)

千葉市 (Chiba City)

大規模展開・成果実証モデル (Large-Scale Deployment & Results-Proven Model)

全庁でChatGPT-3.5を活用。文書作成で平均40%の時間短縮を達成。市民向け案内の質向上。

 

船橋市 (Funabashi City)

専門家主導・人材育成モデル (Expert-Led & Human Development Model)

県内初の「生成AIアドバイザー」を任命。管理職・一般職員への研修を重視し、人材育成から着手。

 

成田市 (Narita City)

セキュリティ最優先・LGWANモデル (Security-First & LGWAN Model)

LGWAN(行政専用の閉域網)で利用できる専用AIサービス「exaBase」を導入。セキュリティを徹底。

 

松戸市 (Matsudo City)

迅速導入・全庁展開モデル (Rapid Adoption & All-Staff Rollout Model)

2023年7月に迅速にガイドラインを策定し、全職員を対象に活用を開始。情報収集や分かりやすい文章作成を推進。

 

市川市 (Ichikawa City)

段階的検証・慎重導入モデル (Phased Verification & Cautious Adoption Model)

2023年8月から庁内試験運用を開始し、効果と課題を検証。ガイドラインを策定し、本格導入への土台を築く。

 

  • 千葉市: 40%という具体的な時間短縮効果を実証し、大規模導入の成功モデルを示しました 。
  • 船橋市: 「AIアドバイザー」という専門家を任命し、技術の導入成功には「人」への投資が不可欠であることを示しています 。
  • 成田市: LGWANという行政専用の閉鎖されたネットワーク上でAIを動かすことで、セキュリティへの懸念を払拭しました。これにより、内部データを使った議会答弁書の作成など、より高度な活用が可能になります 。
  • 松戸市・市川市: ガイドライン策定から段階的、あるいは一斉に展開するという、他の中規模自治体でも真似しやすい現実的なモデルを実践しています 。

賢く、安全に すべての土台となる「AI利用のルールブック」

「便利なのは分かったけれど、私たちの個人情報がAIに使われたりしないの?」―。こうした不安を感じるのは当然のことです。千葉県の自治体は、その懸念に真正面から向き合い、非常に厳格な「ルールブック」を整備しています。

興味深いのは、この厳しいルールがAI導入のブレーキになるのではなく、むしろ「アクセル」として機能している点です。明確で安全志向のルールがあるからこそ、行政のトップは安心して職員に使わせることができるのです。リスクを管理することが、結果的に導入を加速させています。

さらに、浦安市のガイドラインが千葉県や千葉市、松戸市のものを参考にしているように、自治体同士が互いの知見を学び合う「エコシステム」が形成されています 。これにより、県内全体で高いレベルの安全基準が保たれているのです。

そのルールブックの根幹をなす、いくつかの重要な柱を見てみましょう。

柱1: 情報保護は絶対最優先

  • 黄金のルール: 個人情報や機密情報は、絶対にAIに入力してはならない 。氏名や住所はもちろん、非公開の相談内容なども含まれます。
  • 匿名化しても油断しない: たとえ名前を消したとしても、他の情報と組み合わせることで個人が特定できてしまう可能性があるデータは、入力が禁止されています 。ここまで徹底して、私たちのプライバシーは守られています。

柱2: 判断するのは、常に「人」

  • AIは副操縦士: AIが作った文章やデータが、そのまま使われることは決してありません。職員は必ずその内容を自分の目で確認し、事実確認を行い、最終的な責任を負います 。AIの回答はあくまで「下書き」であり、「決定」ではないのです。
  • 間違いや偏りのチェック: AIは時に事実と異なる情報(ハルシネーション)を生成したり、学習データに含まれる偏見を反映したりすることがあります。ガイドラインは、職員に対して正確さ、公平さ、中立性を厳しくチェックするよう義務付けています 。

柱3: 透明性と説明責任

  • 作成元の明記: AIが生成した文章を大幅に修正せずに使う場合は、「千葉県生成AI利用サービスにより作成」といったように、AIが作成したことを明記するルールがあります 。これにより、情報の出所が透明化されます。

柱4: 適材適所のツール選び

  • セキュリティが確保された庁内専用のAIサービスと、GoogleのBardのような一般的なサービスは明確に区別されています。リスクの高い外部のツールは、公開情報を使った非機密的な作業に限定され、かつプライバシー設定を有効にした上でしか使えません 。

このAI革命が、市民である「あなた」にもたらすもの

千葉県の自治体で進むAI導入は、職員を機械に置き換えるためのものではなく、職員の能力を最大限に引き出すための、現実的で責任あるイノベーションです。

この変化は、巡り巡って私たち市民の暮らしに直接的なメリットをもたらします。

  • より速いレスポンス: 役所の内部業務が効率化されることで、私たちの問い合わせへの回答や、申請手続きの処理がスピードアップします。
  • より質の高いサービス: 職員が定型業務から解放されることで、人の温かみや深い思考が求められる複雑な相談に、より多くの時間をかけられるようになります。
  • より未来志向の行政: 千葉県は、新しい課題に適応し、テクノロジーを公共の利益のために活用できる、未来に対応した行政サービスを築きつつあります。

これは、まだ始まりに過ぎません。今日築かれているこの土台は、明日、さらに革新的で応答性の高い市民サービスへとつながっていくことでしょう。

よくある質問にお答えします!千葉の行政AI Q&A

「まだ疑問がある…」という方のために、自治体のAI活用に関するよくある質問と答えをまとめました。

Q1: 私の個人情報がChatGPTに入力されたりしませんか?

A: いいえ、絶対にありません。すべての自治体のガイドラインで、個人情報や機密情報の入力は固く禁じられています 。

Q2: AIのせいで役所の職員がリストラされたりしませんか?

A: 現在の目的は、職員を置き換えることではなく、AIをアシスタントとして使い、今いる職員の仕事の効率を上げることです。それによって生まれた時間で、より人間的な対応が必要な市民サービスを充実させることを目指しています 。

Q3: AIが作った情報は信用できるの?間違っていたらどうするの?

A: AIが生成した情報は、必ず人間の職員が内容をチェックし、事実確認をしてから使われます。最終的な責任は、AIではなく常に職員が負うことになっています 。

Q4: AIの利用ルールは誰が決めているのですか?

A: 千葉県や各市町村が、それぞれ詳細な利用ガイドラインを作成しています。多くの場合、他の自治体の事例を参考にしながら、県内全体で一貫した高い安全基準を設けています 。

Q5: 千葉県内の市は、全部同じAIを使っているのですか?

A: いいえ、様々です。ChatGPTのような一般的なツールを厳しいルールの下で使っているところもあれば、成田市のように行政専用のプライベートなネットワークで動く、特に安全性の高いAIサービスを導入しているところもあります 。

Q6: 今、AIは主にどんな仕事に使われているのですか?

A: 最も多いのは、文書の下書き、長い会議の要約、イベントや政策のアイデア出し、そして複雑なExcelの数式作成などです 。

Q7: 実際に役所の仕事は良くなったのですか?

A: はい。例えば千葉市では、AIの活用によって文書作成の時間が平均で40%削減されたと報告されており、これは大きな効率アップと言えます 。

Q8: 税金がたくさん使われているのでは?

A: 専用サービスの導入には費用がかかりますが、多くの試行は既存の、あるいは低コストのAIを利用しています。目的は、投資した費用を、業務効率の大幅な向上によって回収し、最終的には税金でより価値の高いサービスを提供することにあります。

Q9: 船橋市の「AIアドバイザー」って何ですか?

A: 船橋市は、AI戦略を指導し、職員を研修するために外部の専門家を任命しました。これは、ただ技術を導入するだけでなく、職員のスキルアップに投資することで、AIを賢く効果的に使おうという市の強い意志の表れです 。

Q10: 千葉の自治体におけるAI活用の、次の一手は何ですか?

A: 現在は庁内の業務効率化が中心です。今後、技術と職員のスキルがさらに向上すれば、市民からの問い合わせに答える高性能なチャットボットや、都市計画を改善するためのデータ分析など、より直接的な市民サービスにAIが活用されていく可能性があります。もちろん、その際も今と同じ厳しい安全ガイドラインが適用されます。

引用文献

1. 首位→残留争いに…「ぶれた」アビスパ福岡 原点回帰で5連敗脱出 ..., https://cont.t-com.ne.jp/sports/837926_1.html

2. 県専用環境の導入による生成AIの利用拡大について - 千葉県, https://www.pref.chiba.lg.jp/dejisui/press/2023/sc20240126.html

3. 千葉県の生成AI活用事例|自治体・企業のAIによる地方創生・地域活性化の取り組みを紹介, https://web3-chihou-sousei.net/ai/chiba/jirei-chiba/

4. 全国知事会デジタル社会推進本部 『生成AI利活用検討ワーキング ..., https://www.nga.gr.jp/committee_pt/item/houkokusyo.pdf

5. 生成AIで業務効率化と県民サービスの向上を!/千葉県, https://www.pref.chiba.lg.jp/dejisui/dxportal/smart/generationai202411.html

6. 生成AI「ChatGPT」の業務での活用を開始しました|松戸市, https://www.city.matsudo.chiba.jp/shisei/keikaku-kousou/digital/chatgpt.html

7. 取手市、生成AI議会答弁書作成支援システムで議会対応業務の効率化へ - CaseHUB.News, https://casehub.news/category/news/ai-20.html

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9. PowerPoint プレゼンテーション - 市川市, https://www.city.ichikawa.lg.jp/common/pla02/file/0000440020.pdf

10. 令和6年度第3回定例記者会見資料(令和6年7月12日開催)|船橋市 ..., https://www.city.funabashi.lg.jp/shisei/kouhou/004/01/p128691.html

11. 「exaBase 生成AI for 自治体運用パッケージ」LGWAN環境で千葉県成田市が利用開始, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000153.000047071.html

12. exaBase 生成AI for 自治体 - エクサウィザーズ, https://exawizards.com/exabase/gpt/gov/

13. 浦安市生成AI利用ガイドライン, https://www.city.urayasu.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/043/501/urayasucityseiseiairiyouguideline.pdf

14. 生成 AI の利用ガイドライン 【第 2.0 版】 令和6年2月 千葉県, https://www.pref.chiba.lg.jp/dejisui/press/2023/documents/guideline20240201.pdf

15. 生成AIの活用に関するガイドラインについて - 千葉市, https://www.city.chiba.jp/somu/joho/kaikaku/29gyokaku_seiseiai.html

16. ChatGPTを全庁で業務に利用します - 流山市, https://www.city.nagareyama.chiba.jp/section/1009951/1009960/1043533/index.html

17. 県内初!「松戸市職員 ChatGPT 活用ガイドライン」を 策定し、『業務での活用を開始』, https://www.city.matsudo.chiba.jp/shisei/keikaku-kousou/digital/chatgpt.files/0.pdf

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