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台湾海底ケーブル切断の真相と日本への警告

 

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私たちの生活を支えているインターネット。その通信の99%以上が、実は宇宙の衛星ではなく、海の底を這う「海底ケーブル」によって行われていることをご存知でしょうか。今、この生命線が脅かされています。2023年2月、台湾の離島である馬祖島(ばそとう)で、海底ケーブルが相次いで切断され、島民の通信が遮断されるという事態が発生しました。これは単なる事故ではなく、中国による意図的な「グレーゾーン作戦」であるとの見方が強まっています。

この記事では、台湾で頻発するケーブル切断の現状と、それが日本、特に沖縄に及ぼす深刻な影響について詳しく解説します。また、読者の皆様から寄せられた「衛星画像を使って犯人を瞬時に特定できないのか」「他にどのような対策が必要なのか」という重要な疑問に対し、最新の技術動向と安全保障の観点から、専門用語を使わずに分かりやすくお答えしていきます。中国を単なる隣国ではなく、安全保障上のリスクをもたらす存在として正しく認識し、私たちの通信インフラをどう守るべきか、一緒に考えていきましょう。

1. 台湾で起きている「見えざる戦争」の現実

3年で20本以上、異常な頻度で起きる切断事故

台湾周辺の海域では、海底ケーブルの切断事故が異常な頻度で発生しています。過去5年間で、台湾と離島を結ぶケーブルが切断された回数は約27回にも及びます。特に衝撃を与えたのが、2023年2月の事件です。

わずか6日の間に、台湾本島と馬祖島を結ぶ2本のケーブルが立て続けに切断されました。1本目は中国の漁船によって、2本目は中国の貨物船によって切断されたとされています。これにより、馬祖島の住民約1万4000人は、インターネットや電話がほとんど繋がらない「デジタル孤島」の状態に陥りました。病院の予約ができない、電子決済が使えない、家族と連絡が取れないといった生活への甚大な被害が約50日間にわたって続いたのです。

「事故」を装う中国のグレーゾーン戦術

ここで重要なのは、これらの切断が「事故」として処理されている点です。海底ケーブルは、漁の網や船の錨(いかり)が引っかかって切れることが稀にあります。しかし、短期間に同じ場所で連続して切断が起きる確率は極めて低く、台湾当局や各国の専門家は、これが中国による意図的な嫌がらせ、あるいは台湾侵攻の前段階としての「予行演習」ではないかと疑っています。

軍事力を使わずに、民間船を使って相手国のインフラにダメージを与える。そして「あくまで事故である」と主張して責任を回避する。これは「グレーゾーン事態」と呼ばれる戦術であり、平時と有事の境界を曖昧にする中国の常套手段です。最近では「Shunxin-39(舜信39)」という船が、台湾周辺だけでなくバルト海の海底ケーブル損傷にも関与している疑いが浮上しており、世界的な懸念事項となっています。

2. 日本・沖縄に迫る「通信遮断」と「盗聴」の脅威

他人事ではない日本の危機

台湾で起きていることは、決して対岸の火事ではありません。日本もまた、島国であり、海外との通信のほぼすべてを海底ケーブルに依存しています。もし、日本の海底ケーブルが意図的に切断されれば、インターネットはもちろん、金融取引、物流システム、さらには自衛隊や海上保安庁の通信にも深刻な影響が出る可能性があります。

特にリスクが高いのが、中国に近い沖縄県などの南西諸島です。これらの地域は、台湾と同様に、有事の際に真っ先に通信遮断の標的になる可能性があります。

実際に発見された盗聴装置

脅威は「切断」だけではありません。「盗聴」のリスクも現実のものとなっています。衝撃的な事実ですが、2018年頃、沖縄近海の海底ケーブルに、中国製とみられる盗聴装置が取り付けられていたことが判明したとの報道があります。

海底ケーブルから情報を盗むには、高度な技術と、ケーブルの正確な位置情報が必要です。中国の海洋調査船が日本の排他的経済水域(EEZ)内で頻繁に活動していることが確認されていますが、これは単に海底の地形を調べているだけではありません。どこにケーブルが通っているか、どこの海底が作業しやすいかといった、いわば「戦場の事前調査」を行っている可能性が高いのです。実際に、中国の治安機関が自国の海域で、外国の潜水艦を探知するための水中センサーや、情報を送信する装置を運用していることも明らかになっています。彼らは海底での工作活動に習熟しており、いつでも日本の通信インフラに手を触れられる能力を持っていると考えるべきです。

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3. 技術的検証:犯人の「瞬時特定」は実現可能か

「問題発生箇所を瞬時に特定し、衛星画像で犯人を特定できればよいですが、これは実現可能ですか」という質問は、問題の核心を突いています。結論から言えば、最新の技術を組み合わせることで、「ほぼリアルタイムでの特定」は実現可能です。ここでは、その仕組みを3つのステップで解説します。

ステップ1:光ファイバー自体をセンサーにする「DAS」技術

まず、ケーブルが切断されたり、誰かが触れたりした瞬間をどうやって知るかです。これには「DAS(分散型音響センシング)」という最新技術が使われます。

通常、海底ケーブルはデータを送るためのものですが、この技術を使うと、ケーブルの中を通る光の微妙な変化を読み取ることで、ケーブル全体を「数千キロメートルにわたる長いセンサー」に変えることができます。これにより、ケーブルが切断された瞬間だけでなく、その予兆となる「船の錨が海底を引きずる音」や「何かがケーブルに接触した振動」を、数メートル単位の誤差で即座に検知できます。つまり、ケーブルが切れる前に「今、何かが近づいている」ことすら分かるようになるのです。

ステップ2:雲を透視する「SAR衛星」の活用

異常を検知したら、次は「誰がやっているか」を目視で確認する必要があります。ここで活躍するのが人工衛星です。しかし、普通のカメラを積んだ衛星(光学衛星)には弱点があります。夜間や、雲がかかっていると地上が見えないのです。台湾海峡や日本の海は雲が多いことが多く、これでは犯人を見逃してしまいます。

そこで必要なのが「SAR(合成開口レーダー)衛星」です。これは自ら電波を発射し、跳ね返ってきた電波を画像にする技術です。電波は雲や雨を突き抜けるため、悪天候でも、真夜中でも、海上の船をくっきりと映し出すことができます。最近では、民間企業が多数のSAR衛星を打ち上げており、地球上のあらゆる場所を数時間おき、あるいはもっと頻繁に撮影できる体制が整いつつあります。

ステップ3:AISとの照合で「闇の船」を暴く

船は通常、「AIS(自動船舶識別装置)」という信号を出して自分の位置を知らせています。しかし、悪意を持ってケーブルを切ろうとする船は、このAISの電源を切って、身元を隠そうとします(これを「ダークシップ」と呼びます)。

DAS技術で異常を検知した場所の座標を、即座にSAR衛星に送り、撮影させます。その画像に船が写っているのに、AISの信号が出ていなければ、その船は意図的に身元を隠している「怪しい船」だと断定できます。このように、音響センサー(DAS)とレーダー衛星(SAR)、そして船舶データ(AIS)を組み合わせるシステム(チップ・アンド・キューと呼ばれます)を構築すれば、ご質問にあるような「瞬時の特定」は技術的に十分可能なレベルに来ています。

4. 「瞬時特定」だけでは足りない?必要な「その他の施策」

犯人を特定できるようになったとしても、それだけで問題が解決するわけではありません。「実現可能な場合、他にどのような施策が必要ですか」という点について、技術以外の重要な対策を解説します。

現行犯逮捕を阻む「法律の壁」

最大の問題は、たとえ衛星画像で中国の船がケーブルを切っている証拠を押さえたとしても、日本の海上保安庁や沿岸警備隊がすぐにその船を捕まえられるわけではない、という点です。

現在の国際法(国連海洋法条約)では、公海(どこの国のものでもない海)にある海底ケーブルを外国船が切断しても、それを「犯罪」として取り締まる権限が沿岸国にはほとんどありません。意図的に切ったことを証明するのは非常に難しく、多くの場合「うっかり網が引っかかってしまった」という過失として扱われ、民事上の損害賠償請求にとどまってしまいます。

したがって、日本がとるべき施策の一つは、「国際ルールの変更」を働きかけることです。意図的なインフラ破壊行為を国際的な犯罪として定義し、沿岸国が取り締まれるように法整備を進める必要があります。また、国内法を改正し、日本のEEZ内でのケーブル破壊行為に対して、より厳しい罰則を適用できるようにすることも急務です。

現場に急行するための「物理的な抑止力」

衛星で犯人を見つけても、現場に船がいなければ手出しできません。重要ケーブルが通っている海域を「防護推奨海域」に指定し、海上保安庁の巡視船や、無人ドローン船(USV)による常時パトロールを行う必要があります。

「ここには監視の目があり、不審な動きをすればすぐに駆けつける」という体制を見せつけること自体が、中国に対する強い抑止力になります。

「切られても大丈夫」な仕組みづくり(プランB)

どれだけ監視しても、戦争のような事態になればケーブルは切断されてしまいます。その時に備えて、「切られても通信が途絶えない」バックアップ手段を用意することが不可欠です。

台湾では現在、オードリー・タン元デジタル発展部長(大臣)らの主導により、大規模な「プランB」が進められています。これは、海底ケーブルが全滅しても通信を維持できるよう、イギリスの「OneWeb(ワンウェブ)」やアマゾンの「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」といった低軌道衛星通信網を利用し、台湾国内に700カ所以上の受信拠点を整備するという計画です。また、独自の通信衛星を打ち上げる計画も進行中です。

日本もこれに倣い、アメリカの「スターリンク」などの衛星通信を緊急時に使える体制を強化しています。さらに、ソフトバンクなどが進めている「Candle(キャンドル)」ケーブルのように、中国に近い海域を避けた新しいルートでケーブルを敷設したり、ケーブルの陸揚げ場所を東京や大阪だけでなく、北海道や九州へ分散させたりする取り組みも進められています。これが「経済安全保障推進法」に基づく日本の国家戦略です。

5. 中国を「脅威」と認識した上での国家戦略

「中国は友好国ではなく、そのようなことをする敵対国と認識すること」は、すべての対策の前提となる最も重要な視点です。

これまで海底ケーブルは、あくまで民間企業のビジネスインフラとして扱われてきました。しかし、中国がこれを「兵器」のように扱い、意図的に切断や盗聴を行っている以上、日本政府もこれを「国家の安全保障」の問題として捉え直す必要があります。

民間企業任せにするのではなく、国が主導して監視システム(DASや衛星)にお金を出し、海上保安庁や自衛隊が守る対象に「海底ケーブル」を明確に加えること。そして、もし日本のケーブルに手を出せば、ただでは済まないという明確なメッセージを、外交ルートを通じて中国に伝え続けることが大切です。G7(主要7カ国)やクアッド(日米豪印)といった枠組みで連携し、中国の無法な振る舞いを許さない国際的な包囲網を作ることが、日本の通信を守る最後の砦となります。

まとめ

中国による海底ケーブルへの脅威は、もはや空想の話ではなく、現実にそこにある危機です。台湾での頻繁な切断事故や、沖縄近海での盗聴疑惑は、日本が直面しているリスクの深刻さを物語っています。

ご質問いただいた「衛星画像による瞬時の犯人特定」は、DAS技術とSAR衛星、AIS分析を組み合わせることで技術的には可能です。しかし、それを実際の安全に繋げるためには、国際法の見直しや常時パトロール体制の構築、そして衛星通信によるバックアップの整備といった「多層的な対策」が必要です。

何より大切なのは、私たち日本人が「通信インフラは攻撃される可能性がある」という現実を直視し、中国のグレーゾーン戦術に対して毅然とした態度で備えることです。便利なインターネットの裏側で、静かなる攻防戦が続いていることを忘れてはいけません。


海底ケーブルの切断・盗聴・検知に関するよくある質問

Q1. 海底ケーブルの切断箇所や犯人の特定を「瞬時に」行うことは技術的に可能ですか?

A1. はい、複数の技術を組み合わせることで「ほぼリアルタイム」の特定が可能です。「DAS(分散型音響センシング)」という技術を使えば、光ファイバー自体をセンサーとして利用し、切断の瞬間だけでなく、その予兆となる「錨を引きずる音」や「切断音」を検知し、数メートル単位で場所を特定できます。これに「SAR(合成開口レーダー)衛星」を組み合わせることで、夜間や悪天候でも現場にいる船舶(AISを切っている「闇の船」を含む)を撮影し、犯人を特定することが可能です。

Q2. 中国による「海底ケーブル盗聴」は実際に起きているのですか?

A2. はい、その懸念は非常に高い確度で存在します。2018年には沖縄近海の海底ケーブルに中国製とみられる盗聴装置(盗聴などを目的とした不正な機器)が取り付けられていたことが判明しています。また、中国の海洋調査船は頻繁に日本のEEZ内で活動しており、海底の地形データ収集だけでなく、ケーブルの位置特定や、有事の際に切断・盗聴するための「戦場準備」を行っていると専門家は分析しています。

Q3. 衛星画像で犯人を特定する場合、天候が悪くても大丈夫ですか?

A3. 通常の「光学衛星」は雲や夜間の影響を受けますが、「SAR(合成開口レーダー)衛星」を使用すれば問題ありません。SAR衛星は電波を使って地表を観測するため、雲、霧、雨を透過し、夜間でも鮮明な画像を取得できます。最近では民間企業(ICEYEやCapella Spaceなど)が多数のSAR衛星を運用しており、高頻度での監視が可能になりつつあります。

Q4. 日本や台湾は、ケーブル切断に対してどのようなバックアップ体制をとっていますか?

A4. 台湾は「Plan B」として、低軌道衛星(OneWebやProject Kuiperなど)との契約を進め、有事の際にインターネットを確保するための受信拠点を国内に700カ所整備する計画を進めています。日本も経済安全保障推進法に基づき、ケーブルの陸揚げ局を東京・大阪などの大都市から地方(北海道や九州)へ分散させたり、中国周辺の浅い海域を避けた新しいルート(Candleケーブルなど)の敷設を進めています。

Q5. 犯人を特定できた場合、法的に処罰することはできますか?

A5. 現行の国際法(国連海洋法条約)では、公海上で外国船がケーブルを切断しても、それを「犯罪」として裁くことが非常に難しいという大きな課題があります。故意であることを証明するのが難しく、通常は「過失」として民事賠償の問題に留まってしまいます。そのため、日本や関係国は、意図的なインフラ破壊を国際的な犯罪として定義し、沿岸国が取り締まれるようにする法制度の改正や新たな条約作りが必要とされています。

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