社内SEゆうきの徒然日記

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相模原市が狙う「次のデータセンター銀座」- 印西市の電力不足とAI時代の課題

business.nikkei.com

 

相模原市が狙う「次のデータセンター銀座」- 印西市の電力不足とAI時代の課題

印西市の電力供給が限界に達し、新規データセンター建設に10年待ちという深刻な状況が発生する中、相模原市が次の有力候補地として浮上している。AI技術の急速な普及により、データセンターの電力消費量は爆発的に増加しており、日本のエネルギーインフラにとって先送りできない重要な課題となっている。

 

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印西市「データセンター銀座」の成功と限界

千葉県印西市は「データセンター銀座」として知られ、災害リスクが低く安定した地盤、都心に近い通信の利点を活かして、2020年頃からグーグルをはじめとする多くの企業がデータセンターを設立している1。現在、アマゾン、グーグルなど外資系IT大手のデータセンターが立ち並び、大和ハウス工業も2030年までに東京ドーム7個分の敷地に14棟のデータセンターが建つ国内最大級のデータセンターパークの整備を進めている2

印西市における固定資産税は10年前の約72億円から本年度は約155億円と倍以上に膨らみ、データセンター進出による税収効果の高さが実証されている2。データセンターは他の工場などと比べて騒音や排ガスの問題もなく、車両の出入りも少ないため、地権者から好意的な反応を得やすいという特徴がある1

しかし、急激に増加する電力需要に供給が追いつかず、東京電力パワーグリッド(PG)によると、印西市で新規に申し込むデータセンター事業者は電力供給まで10年見る必要があるという深刻な状況に陥っている13

相模原市の戦略的データセンター誘致

印西市の電力供給限界を受けて、相模原市が次の有力候補地として注目されている。土地区画整理事業によって整備された麻溝台・新磯野地区にデータセンターを誘致する計画が進行中で、実現すれば面積において印西市と同等、それ以上のデータセンター集積地になる可能性があると期待されている1

相模原市の務川慧市議会議員によると、地権者向けの賛同調査では3分の2以上の賛成が得られており、オーストラリアの物流不動産大手グッドマングループなども参画し、地権者との話し合いを進めているという13。市議会では、複数のデータセンターが立地された場合、多くの高度専門職の雇用機会の創出や税収の増加に加えて、新たな都市拠点として地域の活性化に繋がるものと認識している3

南部地区での税収見込額は、物流施設の固定資産税・都市計画税で約5.3億円/年、データセンターの固定資産税・都市計画税、償却資産税で約11.8億円/年と試算されており4、相模原市にとって大きな経済効果が期待されている。

データセンター立地条件から見た実際的な課題

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データセンター内サーバメンテナンスの現場経験から見ると、データセンターの立地選定には実用的な視点が重要である。まず、駅前とは言わないまでも、会社からメンテナンスなどで頻繁に訪問する必要があるため、主要駅から徒歩圏内であることが望ましい。これは、緊急時の対応やシステム保守において、アクセスの良さが運用効率に直結するためである。

基本的にどこのデータセンターも地元雇用はほとんど生まれないので、都市圏から訪れるエンジニアのアクセスの良さも重要です。

*駅から車で15分(徒歩不可)とかいう立地のデータセンターは論外。

k5963k.hateblo.jp

データセンターに求められる立地条件として、自然災害に強い地盤の固さ、活断層から離れた場所、津波や高潮の危険性がない地域などが重要視される9。印西市が選ばれた理由も、強固な地盤で自然災害に強い地形、成田空港からのアクセスの良さ、電力の安定供給体制などが評価されたためである19

AI時代の電力消費爆発とインフラ課題

AI技術の急速な普及により、データセンターの電力消費量は深刻な問題となっている。国際エネルギー機関(IEA)によると、AIの急速な普及でデータセンターの消費電力はアメリカや中国を中心に増え、2030年までに現在の2倍以上のおよそ945テラワットアワーに膨らむと予測されている6。これは、現在の日本の総電力消費量をわずかに上回る規模に相当する。

一般的なAI向けのデータセンターは1年間に10万世帯分の電力を消費するとされ6、データセンター1棟当たりの消費電力量は一般家庭約1万世帯分に達する2。生成AIでは、文字通り桁違いの電力を消費し、ChatGPTを生み出したOpenAI社の言語モデル「GPT-3」の機械学習時の消費電力量は1,287MWhで、原子力発電1基の1時間分の電力量を上回っている7

電力インフラ集約の必要性

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データセンターは大量の電力を消費するため、変電所などのインフラが集まっている方が効率的である。ポツンポツンと分散しているよりも、ある程度集約されている方が電力インフラの効率的な活用と拡張が可能となる。印西市でも東京電力パワーグリッドが変電所を突貫工事で完成させるなど電力網を整備してきたが、深さ20~30メートルの地下に約10キロのトンネルを掘削し、千葉県船橋市の変電所から高圧送電ケーブルをつなぐという大規模な工事を実施している2

本来は最低でも8年はかかる工事とみられていたが、データセンターの急増に対応するため、「突貫」で工事を実施したことからも、電力インフラの整備がいかに重要かつ困難であるかが分かる2

先送りできない電力問題への対策

東京電力管内はただでさえ電力に余裕のないレベルであり、2024年7月8日には東京電力エリアで電力需要の増加により、一時、予備率が3%台にまで低下し、中部電力パワーグリッドから電力融通を受ける事態が発生している12。電力の安定供給に必要な予備率は最低でも3%とされており、ギリギリの状況が続いている。

世界の多くのデータセンターでは、生成AIなどの影響で電力需要が伸びており、2022年には消費電力量が世界全体で約460TWh(テラワット時)だったのに対し、2026年にはその倍以上の約1,000TWhに達する可能性があるとされている7。この数値は、日本全体の総消費電力量に匹敵する数字である。

今後の展望と課題

データセンターの立地分散は災害リスクの軽減と電力負荷の分散という観点から重要である。複数のデータセンターを利用する場合、特定の地域に集中させることで自然災害時の被害リスクが高まるため、遠隔地にあるデータセンターを選ぶことでリスクを回避できる9

ただし、分散には電力インフラの整備コストという課題がある。新たなデータセンター拠点の開発には、変電所建設に10年程度の期間が必要であり13、計画的なインフラ整備が不可欠である。

 

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省エネ対策も重要な課題となっており、NTTグループが開発した大規模言語モデル「tsuzumi」では、ChatGPTと比較して学習時のコストを最大で300分の1、推論コストを最大約70分の1に抑えられるという事例もある7。データセンター側では、従来型と比べサーバー冷却のための消費電力を約30%削減できる液体冷却装置の導入や、実質100%再生可能エネルギーの使用などの取り組みが進められている7

まとめ

相模原市のデータセンター誘致戦略は、印西市の電力供給限界という現実的な課題を背景として進展している。AI時代の到来により、データセンターの電力消費量は爆発的に増加しており、これは先送りできない社会的課題となっている。効率的なインフラ活用のためには適度な集約が必要である一方、災害リスク分散のためには地理的な分散も重要である。

今後は、再生可能エネルギーの活用拡大、省エネ技術の開発、計画的な電力インフラ整備を総合的に進めることが求められる。データセンターは現代社会の重要なインフラであり、経済効果も大きいが、持続可能な発展のためには電力問題の解決が急務である。相模原市の取り組みが成功例となり、他の自治体にとってもモデルケースとなることが期待される。

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