反対運動主導市民団体

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【日野市データセンター建設反対運動】実態と誤解 - 元データセンター勤務経験者の視点から
東京都日野市で計画されている三井不動産によるデータセンター建設計画が、地域住民の反対運動に直面しています。「巨大データセンターから住民の暮らしと環境を守る市民の会」を中心に、CO2排出量の増加や気温上昇への懸念が表明されていますが、こうした主張は科学的に妥当なのでしょうか?データセンター内で何度も徹夜での作業を経験してきた筆者の視点から、データセンターの実態と、よく見られる誤解について検証していきます。元日野自動車工場と比較した環境影響や、最新のデータセンター技術についても解説し、冷静な議論の一助となることを目指します。
1. 日野市データセンター建設計画の概要
1.1 三井不動産による日野自動車工場跡地開発計画
三井不動産は2023年に日野市日野台にある約11万4000平方メートルの土地を買収しました。これはかつて日野自動車の工場があった土地です。2024年7月、同工場跡地におけるデータセンターの建設計画「日野DC計画」が発表されました12。
2025年3月時点で敷地内では解体工事が進んでいます。建設工事は2026年11月から始まる予定で、2031年2月の完成を目指しています12。この長期的な計画は、周辺環境への影響を最小限に抑えるための配慮も含まれています。
1.2 データセンターの規模と特性
計画されているデータセンターは、当初の構想では最高高さ80メートルでしたが、住民の意見を考慮して72メートルに変更されました。また、建物自体の高さも75メートルから56メートルに見直されました2。これは地域住民の懸念に対する三井不動産の対応の一例です。
住宅が存在するデータセンター建物西側については、建物と道路までの間に約70メートルの空白地帯(セットバック)を設け、住民が建物に圧迫感を抱かずに済むよう配慮したとされています2。こうした計画の変更は、地域との共生を目指す姿勢の表れといえるでしょう。
1.3 建設スケジュールと周辺環境への配慮
三井不動産は「日野市まちづくり条例」に基づき2024年5月と10月に説明会を開催し12、住民からの意見書に対する「見解書」を2025年2月12日に日野市に提出しました。日野市が同書を2月21日に公告したことから、三井不動産が住民の意見に配慮してデータセンター建設計画の一部を修正したことが明らかになりました12。
このように、事業者側も住民の意見に耳を傾け、計画を調整する努力をしています。しかし、依然として反対運動は続いており、双方の対話がさらに必要な状況です。
2. データセンターとは何か - 基本的な特性と役割
2.1 現代社会におけるデータセンターの重要性
データセンターは、デジタル社会を支える重要なインフラです6。通信端末の進化やデータ通信の大容量化、クラウドの普及などにより通信量は増大し、データセンターの需要も急速に高まっています13。
ソフトバンクの推計によれば、日本のデータ処理需要は2020年の6エクサフロップスから30年には1960エクサフロップスに増大するとされています13。政府もデータセンターの建設と地方分散を後押しするため、「データセンター地方拠点整備事業費補助金」を設けており、国家的戦略としてデータセンター整備が進められているのです。
2.2 データセンターの一般的な設備と運用
データセンターでは、サーバー、ルーター、ストレージシステム、プロセッサーなどの機器が設置されています7。これらの機器を安定して運用するためには、適切な冷却システムと安定した電力供給が必要です。
データセンターの立地条件として重要なのは、強い地震にも耐えられる強固な地盤、大量の電力の安定的な供給、大都市圏への近さ、海底ケーブルの陸揚げ局との距離などです13。日野市はこれらの条件のいくつかを満たす立地であり、データセンター建設の候補地として選ばれたと考えられます。
2.3 データセンター内部の実態 - 騒音・排熱の特性
データセンター内のサーバールームの騒音レベルは、60~80dbという測定結果があります9。これは「地下鉄内」と同程度の騒音レベルとされています。主な騒音源はサーバー冷却用のファンやハードディスクの動作音です。
しかし、重要なのはこの騒音がサーバールーム内部の測定値であり、適切な防音設計がされた建物の外部に漏れる騒音は大幅に低減されるという点です。実際、筆者の経験からも、データセンター外部での騒音はほとんど気にならないレベルです。
以前通っていたデータセンターは東京都東部・・・住宅街の中。UR団地の隣にありました。巨大データセンターでした。
(詳細な場所はセキュリティ上の理由で秘密)
もちろん、子供たち、住民も普通に住んでいました。
排熱についても、最新の冷却システムによって適切に管理されており、外部環境への影響は限定的です。次世代のデータセンターでは、この排熱を有効活用する取り組みも進んでいます56。
3. 反対運動の実態と主張されている問題点
3.1 「巨大データセンターから住民の暮らしと環境を守る市民の会」の活動
2025年1月、一部の地域住民が日野DC計画の撤回を求めて「巨大データセンターから住民の暮らしと環境を守る市民の会」を発足させました12。賛同者は200人に上るといい、2月にはデモ行進なども実施しました。
2月16日には、日野台4丁目公園にて「住民合意を抜きにした巨大データセンター建設を許さない」集会とパレードが行われ、日野全市から100人を超える参加者が集まりました3。この活動は地域メディアでも取り上げられ、注目を集めています。
3.2 反対派の主な懸念点と主張
市民の会の関係者によると、住民の最大の懸念は「住宅とデータセンターの距離の近さ」だといいます12。建設されるデータセンターは日野市で最も大きな建物となり、近接する住宅地では、データセンターによって朝9時まで日差しが届かなくなる場所もあるとされています。
また説明会では住民から「(データセンターの排熱によって)気温が上がり児童の熱中症を心配する声や、冷却方法に関する質問などが寄せられた」といいます12。市民団体は「排出される熱量は日野市民19万人が出す量の2倍、電力使用量は全市の3倍と推定される」とも主張しています3。
3.3 住民説明会での議論と対応状況
三井不動産は「日野市まちづくり条例」に基づき説明会を開催し、住民からの意見を聞いています。その結果、当初の構想に比べて、データセンターの建物の最高高さを80メートルから72メートルに、建物自体の高さを75メートルから56メートルに見直しました2。
また住宅が存在するデータセンター建物西側については、建物と道路までの間に約70メートルの空白地帯を設けるなどの配慮をしています2。これらの変更は、住民の声に耳を傾けた結果であり、共生への歩み寄りの姿勢と言えるでしょう。
4. データセンターの環境影響の科学的検証
4.1 CO2排出と気温上昇への影響 - 事実と誤解
データセンターのCO2排出に関しては様々な議論があります。2025年のICT業界は、世界の電気の20%を使用し、世界の二酸化炭素排出量の最大5.5%を排出すると予想されています15。データセンター自体の排出量は業界全体の過半数を占めるとされています。
しかし、データセンターのCO2排出が直接的に建設地周辺の気温上昇につながるという科学的な根拠はありません。気温上昇の影響があるとすれば、それは化石燃料を使用する火力発電所の周辺に限定されると考えるのが妥当です。
デジタル化の進展により、例えば物理的な移動や紙の使用が減少するなど、社会全体としての環境負荷が低減する側面もあり、総合的な視点での評価が必要です14。
4.2 排熱の実態と周辺環境への影響
データセンターからの排熱は確かに存在しますが、最新の冷却技術によって適切に管理されています。さらに、排熱を有効活用する取り組みも進んでいます。
北欧ノルウェーのベルゲン近郊では、データセンターの排熱を街のインフラに転用し、床暖房や地域全体の暖房システムに活用する計画が進行中です6。イギリスでは、データセンター内のサーバーから発生する排熱を鉱油によって回収し、プールを温めるための熱源として利用している例もあります6。
また、寒冷地に立地するデータセンターでは、サーバーからの排熱を居室やエントランスの床予熱、およびロードヒーティングの熱源として活用できるように計画されています4。このように、排熱は問題ではなく、むしろ有効利用できる資源として捉える視点が重要です。
4.3 騒音レベルの実態と対策技術
データセンターの騒音については、確かに発生する可能性はありますが、適切な対策を講じることで大幅に軽減できます。データセンター内のサーバールームの騒音レベルは60~80dbという測定結果がありますが9、これはあくまでサーバールーム内部の値です。
最近のデータセンターでは、防音対策が進んでおり、例えばコンテナ型データセンター向けヒートパイプ熱交換器に「カルムーンシート」という防音素材を採用するなど、騒音対策が進んでいます8。筆者の経験からも、データセンター外部での騒音はほとんど問題にならないレベルであり、むしろ元日野自動車工場と比較すれば、はるかに静かな環境になると予想されます。
4.4 電力消費量の実態と省エネ技術の進化
データセンターの電力消費量は確かに大きいものですが、最新の技術によって効率化が進んでいます。NTTファシリティーズは、データセンターに設置されるサーバーを全て液冷方式サーバーとすることにより、サーバー冷却用消費電力を約50%削減することが可能だとしています5。
また、サーバーの高集積・高密度化が進むことで、データホールの面積は約1/3まで縮小できると試算されています5。これにより、建物全体のボリュームも縮小化され、敷地の利用計画の自由度が増し、より環境との調和を図りやすくなります。
5. 産業変遷の視点から見る日野市の地域開発
5.1 日野自動車工場からデータセンターへの変化
日野市は、かつて「多摩の米蔵」と言われるほど農業が盛んな地域でしたが11、昭和時代に入り工業都市へと変貌し、大手自動車企業などが進出して大企業城下町として発展しました10。
現在は、住宅地、工業地、農地が混在し、地理的特色を活かしたまちづくりが進められています10。日野自動車工場跡地へのデータセンター建設は、こうした産業変遷の一環として捉えることもできます。工業地域から情報産業への移行は、より環境負荷の少ない産業構造への転換という側面もあります。
5.2 文教都市・日野市の特性と産業の共存
日野市は「東京のへそ」とも言われる地域で、多摩川と浅川の清流に恵まれ、湧水を含む台地と緑豊かな丘陵をもつまちです10。「新選組のふるさと」でもあり、国土交通省の「水の郷百選」に認定されているなど、歴史と文化の豊かな地域です10。
このような文教都市としての特性を維持しながら、新たな産業とどう共存していくかは重要な課題です。データセンターは工場と比較して騒音や排気ガスが少なく、交通量も限定的であるため、文教都市の環境を損なうことなく共存できる可能性が高いと考えられます。
5.3 他地域のデータセンター誘致事例と経済効果
千葉県印西市はデータセンター誘致で固定資産税の税収が増加し、子育て支援や福祉など行政サービスの拡充に力を入れることで人口増が続いているという成功事例があります13。
データセンターが地域にもたらす経済効果は、固定資産税の増加だけでなく、建設時の雇用創出や関連産業の活性化なども期待できます。日野市においても、適切に計画が進められれば、同様の経済効果が見込まれるでしょう。
6. データセンターと地域共生の可能性
6.1 最新のデータセンター設計と環境配慮
最新のデータセンターは、環境に配慮した設計が進んでいます。NTTファシリティーズが構想する次世代型データセンターでは、熱伝導率の高い銅管を用いた「プレクールコイルウォール™」を建物外周に張り巡らせ、サーバーの熱により温まった液冷サーバーの冷却水を循環させることで、外気により自然冷却する仕組みが検討されています5。
また、周囲に水盤を取り入れることにより、水盤からの気化熱によってさらに放熱を促進する工夫もされています5。これにより、冷却に必要な設備消費電力量を低減し、環境負荷を最小限に抑える努力が続けられています。
6.2 地域貢献の可能性と雇用創出
データセンターは、固定資産税の増加を通じて地域の税収に貢献します。千葉県印西市の事例では、データセンター誘致により行政サービスの拡充が進んでいます13。
また、サーバーからの廃熱をデータセンター内オフィスの暖房や給湯用途、周辺地域への温水熱源として利用することで、地域全体の省エネルギーに貢献することも検討されています5。こうした排熱の有効活用は、環境負荷の低減と地域貢献を両立させる取り組みとして注目されています。
7. まとめ:データセンター建設に対する冷静な見方
日野市のデータセンター建設計画に対する反対運動は、情報不足や誤解に基づく部分が少なくありません

。実際のデータセンターは、一般に思われているほど騒音や排熱の問題は深刻ではなく、最新の技術によって環境負荷を最小限に抑える努力が続けられています。
元日野自動車工場と比較すれば、騒音レベルや交通量は大幅に減少し、周辺環境への負荷は軽減されることが予想されます。三井不動産による計画の一部変更も、住民の声に耳を傾けた結果であり、共生への歩み寄りの姿勢と言えるでしょう。
文教都市としての日野市の特性を尊重しながら、新たな産業としてのデータセンターとどう共存していくか。感情的な議論ではなく、科学的根拠に基づいた冷静な対話が、よりよい地域づくりには不可欠です。データセンター建設をめぐる議論が、より正確な情報に基づき、建設的な方向に進むことを願います。