スマホの25ヶ月返却販売モデルへの疑問 - 本当に得なの?買い切りとの極端な価格差を考える
現在のスマートフォンは性能が非常に優れており、バッテリー管理機能も充実していることから、実際には数年間にわたって問題なく使用できます。しかし主要キャリアが推進する「25ヶ月返却プログラム」は、2年ごとの買い替えを前提とした販売モデルとなっています。1円や47円という魅力的な価格で宣伝される一方で、買い切り価格との極端な差に疑問を感じる消費者も増えています。本記事では、この販売モデルの問題点と消費者にとって本当に良い選択について考察します。
25ヶ月返却プログラムの仕組みと現状
返却プログラムの基本的な仕組み
現在、ドコモ、au、ソフトバンクの主要3キャリアは、ほぼ同様の返却プログラムを提供しています。これらのプログラムでは、スマートフォンを分割払いで購入し、13〜25ヶ月目に端末を返却すると、最終回の支払いが免除されるというものです。
例えばauの「スマホトクするプログラム」では、対象のスマートフォン/タブレット/ウェアラブル端末をau取扱店で購入後、13カ月目~25カ月目までに端末を当社が回収した場合、最終回のお支払いが不要になります1。
ワイモバイルでは、iPhone14(128GB)を48回払いで購入し、25ヶ月目で機種を返却すれば実質1円/月で端末を提供しています。24回払いを選択した場合、1〜24回の支払いは1円/月となり、合計わずか24円で最新のiPhoneが使えるという仕組みです2。
極端な価格差の実態
この返却プログラムの最大の問題点は、買い切り価格との極端な差です。例えば、あるスマートフォンが25ヶ月返却条件なら実質1円で提供される一方、同じ端末を買い切りにすると11万円になるというケースがあります。
具体的な例として、2025年4月現在、UQモバイルではiPhone16e(128GB)を「112,800円 ⇨乗り換え&2年返却で実質47円」と宣伝しています3。一方、買い切りオプションを選ぶと定価に近い金額を支払う必要があります。
この価格設定は、消費者に返却プログラムを選ばせるよう強く誘導しているとも言えるでしょう。実質的に、買い切りという選択肢はあるものの、現実的な選択肢として機能していないのが現状です。
スマートフォンの長寿命化と2年返却の矛盾
現代スマホの性能と寿命
現代のスマートフォンは非常に高性能化しており、適切に使用すれば4年以上問題なく使えるケースが珍しくありません。iPhone7のような発売から数年経過した機種でも、7年間何不自由なく使用できたという事例もあります。セキュリティアップデートの終了が買い替えのきっかけになることはあっても、性能面での不満は少ないのです。
さらに、多くのスマートフォンには「いたわり充電」のようなバッテリー寿命を延ばす機能が標準装備されるようになり、以前に比べてバッテリーの劣化も抑えられるようになっています。このような技術進化を考えると、2年で買い替えるというのは必ずしも技術的に必要なわけではありません。
環境問題と資源の無駄遣い
2年ごとに強制的に端末を返却させる仕組みは、まだ十分に使えるスマートフォンを回収することになります。このモデルは環境負荷を増やし、資源の無駄遣いにもなりかねません。
返却された端末がどのように再利用・リサイクルされているのか、消費者にはほとんど情報が開示されていないのも問題です。正当な再利用がされているのであれば、その透明性を高めることも必要でしょう。
返却条件の厳しさとリスク
返却時の査定基準
返却プログラムを利用する際の大きなリスクとして、返却時の査定基準の厳しさが挙げられます。auの「スマホトクするプログラム」では、加入時の機種回収・査定には所定の条件があり、それを満たさなかった場合は最大22,000円(不課税)のお支払いが必要となるケースや、特典が受けられない場合があるとされています1。
実際に、画面に0.5ミリほどの傷があるというだけで22,000円を請求されたというケースも報告されています5。このような厳しい査定基準は、プログラムの魅力を大きく損なう要因となっています。
返却プログラムのメリット・デメリット
返却プログラムのメリットとしては、初期費用が極めて低く抑えられること、定期的に最新機種に乗り換えられることなどが挙げられます。特にスマートフォンの最新技術に常に触れていたい方にとっては魅力的な選択肢です。
一方で、デメリットとしては以下のような点が考えられます:
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長期的には割高になる可能性がある
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端末を自分の資産として持てない
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返却時の条件が厳しく、小さな傷でも追加料金が発生する可能性
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2年ごとのデータ移行や設定の手間
キャリア各社の返却プログラム比較
主要キャリアの返却プログラム
各キャリアのプログラムを比較すると、基本的な仕組みは似ているものの、細かい条件には違いがあります。
auの「スマホトクするプログラム」では、13〜25ヶ月目に返却すれば最終回の支払いが不要になります1。例えばiPhone 16e(128GB)の場合、初月~23カ月目で合計47円、24カ月目以降は残価の74,253円(分割可能)となります7。
ワイモバイルの「新トクするサポート」でも同様のプログラムがあり、25ヶ月目での機種変更が推奨されています2。ソフトバンクやドコモも同様のプラグラムを提供しており、業界全体でこの販売モデルが標準化しています。
リサイクルと再利用の実態
返却されたスマートフォンがどのように扱われているのかについては、あまり情報が公開されていません。一部は海外で中古として販売されているとの情報もありますが、キャリア側からの正式な情報開示は限られています。
端末の環境負荷を考えると、本当に必要な買い替えサイクルよりも早いタイミングでの返却を促すこの仕組みには、環境保護の観点からも疑問が残ります。
消費者にとって望ましい選択とは
適正な買い切り価格の必要性
現在の極端な価格差ではなく、より適正な買い切り価格の設定が望まれます。例えば、返却プログラムと買い切りの差を2〜3万円程度に抑えれば、消費者はより自由に選択できるようになるでしょう。
特に、長期間同じ端末を使いたいユーザーにとっては、現状の価格設定は不合理と言わざるを得ません。適正な価格設定によって、消費者の選択肢が広がることが理想的です。
長期使用者向けのインセンティブ
スマートフォンを長く使用する消費者に対して、料金プランの割引や特典を提供するといった施策も考えられます。例えば「3年以上同じ端末を使用している場合、月額料金を割引」といったプログラムがあれば、長期使用のメリットが生まれます。
2025年4月現在のスマホ販売状況
投げ売りキャンペーンの実態
2025年4月現在も、各キャリアは「スマホの投げ売りキャンペーン」を積極的に展開しています。これらのキャンペーンでは、乗り換えや新規契約を条件に、高額なスマートフォンが数十円から数千円で提供されています3。
このような極端な値引きは魅力的に見えますが、ほとんどの場合、2年後の返却が条件となっています。例えば、Google Pixel 9aは、auで「80,000円 ⇨乗り換え&2年返却で実質1,200円」と提供されています3。
規制の影響と今後の展望
2024年12月26日には、総務省が過度な端末値引きを規制する施策を実施しました。この規制により、端末値引きの上限額は通常の端末で最大4万円、ミリ波対応端末で最大5.5万円とされています6。
しかし、各キャリアは返却プログラムを活用することで、実質的に大幅値引きを続けています。今後もこの動向が続くのか、あるいは新たな規制が導入されるのかは注目すべき点です。
結論:消費者主体の選択肢を広げるべき
現在のスマートフォン販売モデルは、キャリア主導で消費者を短期サイクルの買い替えに誘導する形になっています。しかし、スマートフォン自体の性能と寿命が向上している現在、より多様な選択肢が必要ではないでしょうか。
買い切りと返却プログラム、両方の選択肢が合理的な価格差で提供されることが、消費者と環境の両方にとって望ましい未来だと考えられます。特にスマートフォンを長期間使用したいユーザーにとって、現状の価格設定は大きな障壁となっています。
キャリア各社には消費者目線でのサービス設計を、規制当局にはより公平な市場環境の整備を期待したいところです。そして私たち消費者も、長期的な視点で本当に何が得なのかを考える必要があるでしょう。
まとめ:25ヶ月返却モデルの将来性を考える
スマートフォンの25ヶ月返却プログラムは、短期的には消費者にとって魅力的な選択肢に見えますが、長期的な視点や環境問題を考慮すると、必ずしも最適な選択とは言えない側面もあります。
現代のスマートフォンはかつてないほど高性能で耐久性も向上しており、適切に使用すれば4年以上使い続けることも十分可能です。そのような技術的進化を考えると、2年ごとの買い替えを前提とした販売モデルは時代遅れと言えるかもしれません。
消費者一人ひとりが自分のライフスタイルや価値観に合わせて、真に自由な選択ができる環境が整うことを願います。そのためには、キャリア、メーカー、規制当局、そして消費者が共に考え、より良いスマートフォン市場を作り上げていく必要があるでしょう。
Citations:
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- https://rokemoba.com/smartphone/1yen-mobile/
- https://news.mynavi.jp/sim-mobile/smartphone-nageuri-campaigns/
- https://join.biglobe.ne.jp/mobile/sim/gurashi/update_month_check/
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- https://rokemoba.com/smartphone/smartphone-discount-regulations/
- https://hikkoshizamurai.jp/soldi/articles/au_tokusuru_program/
- https://phonet.jp/colum/au-model-change-timing/
- https://www.au.com/mobile/kaetoku/
- https://phonet.jp/colum/softbank-model-change-timing/
- https://www.softbank.jp/mobile/campaigns/list/hangaku-support/
- https://www.nicosuma.com/magazine/device-purchase-program
- https://m-s-y.com/app/ranking/best-paid-games-for-mobile/
- https://news.mynavi.jp/sim-mobile/sumaho-waribiki/
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- https://www.docomo.ne.jp/campaign_event/okaeshi_program/
- https://www.nojima.co.jp/support/koneta/46031/
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- https://network.mobile.rakuten.co.jp/service/replacement-program/
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- https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1665596.html
- https://simsetsu.com/smartphone-highprice/
- https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/3a946c9bd74f7ed841f635149735c91aec38df4c
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- https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/value/1648671.html
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- https://www.showcase-tv.com/mobile/when-smartphone-changing/
- https://phonet.jp/colum/iphone15-buy-cheaply/
- https://www.uqwimax.jp/mobile/plan/discount/tokusuru-program/